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2−2−1


<L1−地球>軌道上/EWACネロ・コクピット


 最初の兆候を感知したのは、戦士としての勘と電子戦オペレータの腕、それぞれがほぼ同時だった。どっちが先だったのかは、双方がそんな事を気にしなかったので、結局は最後まで分からずじまいだった。


 全周モニタ上で開かせている索敵情報ウィンドウを見ていたユーリ・ポポフヴィッチ・セルゲイエフ中尉は、赤外線探知の生データの変化を見て眉をひそめた。
「おい、これは……」
 言いかけた時、後席員が大声を上げた。
「セルゲイエフ中尉、意見具申です!」
「なんだ?」
 聞き返しながらもセルゲイエフは、見た目を裏切るほどの能力を持っている後席員を信頼しきっていたので、彼女が何を言うかを予測出来ていた。
「目標のマイク・ヴィクター05はその……奴らは本気です!」
 碧色の瞳を輝かせながら、電子戦オペレータであるイレーナ・ケリー少尉は力強く叫ぶ。
「それで?」
 セルゲイエフはわざと冷たい口調で応えるが、内心はようやく戦慣れしてきた相棒を頼もしく思っている。全く同時に自分と同じ判断を下しているのが、彼女の声のトーンで分かったからだ。
「は、はい!」美少女然した顔を緊張させながら、ケリーは答える。
「第1戦闘配備への移行の要有りと認めます!」
 セルゲイエフはその言葉を聞くと、子供が泣き出すと言われる笑みを浮かべる。
「よし、旗艦へ連絡しろ! それと信号弾発射だ!」
「了解!」
 褒められた事を喜ぶ子供のような笑みを浮かべたケリーだったが、信号弾発射のキーを叩くと同時に泣き顔に近い顔付きとなる。
「中尉ぃ〜!」
「糞、遅かったか!」
 作戦書通り、自機を後退させながらセルゲイエフは舌打ちする。機体の更に後方には、実際に臨検を行う陸戦隊を乗せたスペース・ランチがいるが、既に機首を反転させようとしている。全周モニタでも確認出来るが、ケリーが作戦中止の信号弾を打ち上げており、それを感知した結果だった。
「MV05、赤外線反応増大中! ああ、目標は全力加速中ですぅ〜。はわわ、ミノフスキー粒子反応まで!」
「気にするな、ケリー少尉!」
 父性を感じさせる頼もしい発音でセルゲイエフが言う。
「はい?」
「これで状況は単純化された。奴らは敵だ」
「は、はい!」
 ケリーは笑みと共に落ち着きを取り戻した。データ解析を進めながらも、臨検部隊への指示を怠らない。既に、攻撃MS隊のヌーベル・ジムIIIは帰還コースに乗っているランチを護衛するポジションに移りつつある。戦闘MS隊は……。
「MV05船体各所から赤外線反応! コンテナを分離開放した模様です!」
「MSが出てくるな……。奴ら、どこまでやる気だ?」
「セイバー01に迎撃指示を出しました。……あれ?」
「どうした? 戦闘中だぞ、不明瞭な言動は慎め!」
「はうっ! 済みませんっ!」ケリーは背筋を伸ばしながら答える。
「セイバー03が動きません!」
「何!」
「コンテナから出てきたのはMSサイズ、熱紋分析によるとおそらくはドライセン。その数9機ですぅ!」


ジェガン・コクピット


 眼前に迫ったドライセンがその左手に持ったMMP−80マシンガンを自機に向けるのを、沢渡真琴少尉は不思議なぐらい他人事のように見ていた。まるでスローVTRのように、全周モニタに映る画像はゆっくりと動いている。ノーマルスーツのヘルメット内に、照準用レーザでロックオンされた事を意味する警報が鳴り響くが、それすらも夢の中で聞く目覚まし時計程の現実感を伴っていない。
(え、これってホントの事?)
 銃口で発砲炎が輝く。赤黒い物が砲口から飛び出す。
「あうっ、シールド防御っ!」
 身体が無意識に反応する。訓練の賜物だった。


 地球連邦軍の量産型MSにはほぼ標準で装備されているシールドは、相手から照射される照準用レーザと連動させる事で、半自動で最適位置で構える事が出来る。機体各部のセンサが感知した照準用レーザの入射角から敵機の方向を予測し、その方向へシールドを向けるのだ。その際、跳弾を期待してシールドを最適角度へと傾ける事までが自動で出来る。運動エネルギー弾であるAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)だけでなく、入射角が浅ければ耐ビームコーティングのおかげでメガ粒子砲もはじく事が期待出来るからだ。ちなみに化学エネルギー弾であるHEAMS(対MS榴弾)やミサイルはシールドの構造──チタン合金でセラミックをサンドした複合材でその熱エネルギーを受け止める。
 だが、シールド自体の大きさにも限りがあるし、マウントしてある腕の可動範囲にも限界がある為、機体全部をカバーする事は出来ない。よって、重要な部分だけを防御するようにプログラムされている。重要な部分とは、もっとも守られるべきパイロットが乗っているコクピットや動力源であるミノフスキー反応炉が収まっている胴体である。


 アナハイム・エレクトロニクス謹製の機載コンピュータシステムは、仕様にうたっている通りの効能を発揮した。ドライセンが90ミリマシンガンから発射したAPFSDSは真琴が乗るジェガンを襲ったが、命中弾となった5発の内4発をシールドで受け止めていた。
「あぅ〜!」
 機体を伝って着弾音がコクピット内に響く。振動はリニアシートがほとんど吸収するが、着弾による減速Gは消しきれず真琴はつんのめる。背中を冷たい物が流れる。
 だが次の瞬間、シールドの可動範囲から外れた1弾が機載コンピュータが優先度を1段低く見た部分に飛び込んだ。
 軽い衝撃と共に、全周モニタの画像の大半が消える。
「ひっ!」
 声にならない悲鳴を真琴はあげる。股間に熱い物が漏れ出すが、すかさず吸水性ポリマーが全てを吸収する。しかし、真琴自身にはそんな事は気にする余裕もない。身体は勝手に動き、モニタをサブシステムへ切り換える。恐怖に顔を歪ませた真琴の操縦に従って、ジェガンはドライセンから距離を取ろうとする。威嚇としてビームライフルも向けられている。
「まだまだなんだからぁ〜!」
 涙だらけの顔なのに、心の底から意地だけを振り絞って真琴は機体を加速させる。


 真琴のジェガンは、2カ所を除いて出撃前とほとんど変わらない外見と性能を維持している。重金属合金の弾芯を4発受けたシールドは帰還後に廃棄処分となるのが決定的なダメージを受けているし、左腕部とのマウント機構はスライドレールが歪んでしまっている。だが、それ自体は戦闘能力の低下に何ら寄与していない。
 問題はもう一つの方にある。シールドの外縁をかすめるように飛来して来た5発目が飛び込んだ先である。
 構造上、強固な装甲を張ることが出来ないジェガンの頭部は、タイトル「残骸」と名付けられた前衛芸術へと変化していた。


ラー・カノン/CDC

「かまわん、あのマイク・ヴィクターは二の次だ! 敵MSを蹴散らして、全機無事で帰投しろ!」
 カノン任務部隊旗艦ラー・カノンのCDC(戦闘指揮所)中央の3DSD(3次元戦況表示装置)のホログラム光に照らされた久瀬義明中佐は、不機嫌さを隠そうともしないで叫ぶ。通信モニタの画面に映るパイロットは、いつも通りの無表情でそれを受け流す。
『了解、でも推進剤が……』
 モニタの中の川澄舞中尉がつぶやくように問い質す。
「それは気にするな」久瀬が胸を張る。
「今、下駄を上げる。それで行け。帰りも用意するから、ビンゴ・フューエルは気にするな」
『了解』舞は小さくうなずく。
『レイピア01は、レイピア02とナイト01と共に出撃、敵MSを撃退します』
 敬礼すると同時にモニタが消える。小さく息を吐いてから、久瀬はCDC左側に位置する発着艦管制員を振り返る。
「下駄はまだか!?」
「現在、カタパルトデッキへの搬送中です」
「発艦準備完了したらすぐに出せ!」
「了解!」
 ここでようやく久瀬は後ろを振り返る。そこには任務部隊司令兼ラー・カノン艦長の水瀬秋子大佐がいつものように微笑んでいた。
「艦長、これで良かったのでしょうか? もっと他に……」
 久瀬が言いかけた時、秋子は右手を挙げて言葉を遮る。
「作戦は巧遅より拙速です、MS群司令」
 秋子はそう答える事で久世の判断を肯定する。
 久世の判断は『時は金なり』が全ての基本である。防宙任務で上がっていた3機のMS内、2機を待機中であるベース・ジャバーで送り込む事で、増援部隊を急遽発艦させる時間を省いたのだ。一時的に低下する防宙能力は、部隊のリフレッシュプログラムで防宙任務に就く事になっている水瀬名雪中尉指揮下の小隊を後から上げる事で対処する。先行する2機だけでは不安が残る増援部隊に関しては、任務部隊で最高の加速力を誇るMSを後から発進させる事で補うつもりである。
「まあそうですが……」
 未だ自信が持てない久瀬がそう言いかけた時、発着艦管制員が報告する。
「ベース・ジャバー002、スレイブモードでの起動確認。初期軌道データ転送確認。進路クリア、カタパルトシステム、オールグリーン!」
「出せ!」
「了解! BJ002、ブラスト・オフ!」
 CDCの前方のモニタにカタパルト射出されるベース・ジャバーが確認出来る。離艦したベース・ジャバーに、今まで防宙任務に就いていたネロとジェガンが近付く。ネロに続いてジェガンがドッキングを完了すると、ベース・ジャバーは一気に加速して飛び去る。
 久瀬はほっとする間もなく、MSハンガーを呼び出す。
「ナイト01は、相沢大尉はまだか!」
『今から上がる、ちょっと待ってくれ』
 モニタ上でチェックリストを確認しながら相沢祐一大尉が答える。別のモニタを見ると、カタパルトシャトルに乗せられたゼータプラスがゆっくりとカタパルトデッキへと搬送されているのが見てとれる。
「遅いな」
 手元の時計を見ながら、久瀬は冷笑を浮かべて言う。だが、祐一は肩をすくめるだけで取り合わない。
『おやっさんが聞いてるぞ?』
「分かってくれるさ、バイラッハ大尉なら」
『まあな……』
 久瀬が余裕を取り戻したことを感じたらしい祐一は、そう言うと笑みを消して尋ねる。
『しかし、あの武装商船は追わなくても良いのか?』
「あ、ああ……」
 久瀬はちらりと後ろを見る。そこでは秋子が笑みと共にうなずいていた。
「あの船は任務部隊の方で追いつめる。貴様は連中を無事に連れて帰ることだけを考えろ」
『ふうん、それだけで良いのか?』
 モニタ上で明らかに分かるぐらい、祐一は顔をニヤケさせる。
「まあ、可能なればドライセンの機載コンピュータかパイロットを確保してくれたら有難いが……」
 珍しく奥歯に物が挟まった感じで久瀬が答える。秋子の後ろに控える情報部の士官が無言でうなずいている。
『ま、いっか……』祐一が真顔に戻って言う。
『俺だって部下を喪いたくないしな』
「……そういう事だ、まだそんな時期じゃない」
『みんな覚悟は出来てるけどな』
「ゼータプラス、ナイト01、発艦準備完了です!」
 発着艦管制員が報告する。ブリッジのモニタでも祐一が乗るゼータプラスが発艦デッキで射出待ちになっているのが分かる。
「ナイト01、敵MSを制圧し、味方部隊の撤退を支援せよ!」
 それまでの『貴様、俺』口調を改め、久瀬は上官として命じる。
『ナイト01、了解!』
 祐一は敬礼しながら答える。口調も態度も、既に軍人のそれに戻っている。
『後は任せたぞ、キティ01』
 祐一は、彼の後に発艦し任務部隊の防宙任務に就く名雪に声をかける。MSハンガーからカタパルトデッキへの搬送途中であるジェガンのコクピットから彼女は返事をする。
『了解だよ、ナイト01!』
『よし! ナイト01、相沢大尉、出るぞ!』
「ナイト01、ブラストオフ!」
 発着艦管制員の言葉と共にカタパルトが作動し、CDCが微かに振動する。モニタでもゼータプラスの発艦は確認出来る。
「キティ01の発艦急げ! "モスクワ"の方はどうか!?」
「キティ02は既にポジションに付いてます。03は……今発艦しました!」


 突発事態から立ち直り、いつも通りの態度で指揮を取る久瀬を見て満足げにうなずいた秋子は、微笑みを消した後、彼女の片腕である副長に小声で話しかける。
「スコット?」
「はい?」
 声をかけられたスコット・ヤングブラッド中佐は訝しむ。第1戦闘配備なのにもかかわらず、ファーストネームで声をかけられたからだ。これは秋子が決めた艦内ルールに反する。
「何かありましたか、秋子?」
 戸惑いながらもヤングブラッドは、秋子があえてファーストネームで話しかけた理由に思い至っていた。
「フォローをお願いします」
 そう言った秋子の視線の先には、未だかつてないほど緊張した操舵手の姿があった。
「お任せ下さい、秋子」
 敬愛して止まない上官の個人的お願いを正確に理解したヤングブラッドは、シートを立って操舵手の下へと飛ぶ。そして、その肩を優しく叩くと、周囲に聞こえないように気を使いながら話しかける。
「大丈夫だ」
「は、はい」
 肩を叩かれた操舵手がうなずき、くせのある赤毛が揺れる。
「我が任務部隊のナンバー1と2が救援に向かっているんだ。それに、沢渡少尉の腕だって、使用火器が限定されているMSに後れをとり続けるほどじゃない。大丈夫だ」
 そう言うと、ヤングブラッドはもう一度肩を叩く。
 再び赤毛を揺らしながら、天野美汐少尉はうなずく。
「は、はい……」


ヌーベル・ジムIII・コクピット


「くっ、うるさいったらありゃしないっ!」
 使い切ったミサイルコンテナを投棄させた美坂香里中尉は、全身を冷や汗にまみれながらも愛機であるヌーベル・ジムIIIを華麗に操る。対艦攻撃や支援戦闘がメインの機体とはいえ、その機体ポテンシャルは交戦しているドライセンに劣っている訳ではない。同じ戦力同士で戦えば、後はパイロットの腕次第である。
 だが、連邦宇宙軍でもトップクラスの腕前を誇る香里が押されっぱなしなのは、相手にしなければならない敵の数が多いからであり、全くの非武装であるスペース・ランチを守らなければならないからである。
「そこっ!」
 レティクルと機影が重なると同時にトリガーボタンを押し込む。ビームが到達するよりも前に、敵機はそこから離脱している。嘲笑うかのように、ドライセンは右手に持つシュツルム・ファウストを構える。
「そんな、旧式火器如きに!」
 舌打ちした香里が再び照準を合わせようとした時、レーザ警戒装置が警報を発する。
「後ろ!?」
 左のコントロールグリップを引きつけてから右のペダルを踏み込み、香里は自機を回避させる。彼女を背後から狙っていたドライセンが撃った120mmHEAMSの1連射は、大きく狙いから外れた。
「ぐっ!」
 左のグリップを今度は前へ押しだしてからねじり、左のペダルを踏み込む。右グリップのスイッチを切り換え、60mmバルカン砲を選択する。レティクルが点滅するより前にトリガーをほんの一瞬だけ押し込む。曳光弾がシュツルム・ファウストの弾頭に吸い込まれ、あっという間に閃光へと変わる。
「しつこい男は嫌われるわよ!」
 自分同様、敵のパイロットが女性である可能性を無視して香里は悪態をつく。
「だけど……」
 そうつぶやきながら、香里は自分を背後から撃ったドライセンを追う。左右に逃げまどうドライセンにレティクルが重なりそうになった瞬間、部下から悲鳴にも似た報告が入る。
『02より01、突破されました!』
「ちっ!」
 5機のドライセンが撤退中のランチを追っていた。その内2機を香里が、残りの3機を部下二人が相手をしていた。その3機の波状攻撃を抑えきれず、1機のドライセンがランチへとその歯牙をかけようとしていたのだ。
「あざとい奴等っ!」
 顔をしかめた香里は右ペダルを限界まで踏み込む。推進剤の残量が飛ぶように減っていくが、任務部隊司令部がタンカー装備のベース・ジャバーを上げてくれるのを信じて無視する。もう一つ、重要な項目を無視する。追尾してくる2機のドライセンを。
「01より02及び03、義務を果たせ!」
 指揮官としてもっとも唾棄すべきだと思っている命令を、香里は忌々しげな表情と共に口にする。自己の損害を無視し、非武装の護衛対象を守れという意味の命令であり、事実上の死守命令であるからだ。香里の見解としては、その命令は指揮官の無能を証明するようなものだが、民主主義を標榜する政府の軍隊においても、それはしばしば発せられる命令である。
 だが、香里の部下達はなんの不満も抱かずに命令を行動に移す。
『03、了解! 任せて下さい、墜としてやりますよ!』
 より敵機に近い小隊3番機がいち早く返信をよこす。そして、楽しげな口調で2番機が続く。
『02より01、上手い事やりますよ。まだ死にたくないですから』
 軽口を叩く部下がそれぞれ追尾を受けており、それほど楽な状況でない事ぐらいは香里にも分かっている。
「頼んだわよ、あたしに恥かかせないでね?」
 2機のドライセンに追尾され、眉間に皺を寄せた香里が内心を押し殺しながら言う。自分を含めたMS隊か、ランチへの損害を覚悟している。
 香里が不承不承運命を受け入れる事を決意した時、低音で頼もしげな響きを持った声がヘルメットのスピーカから流れ出す。
『アルゴス02よりトライデント01、RJ01は小官が守ります』
「何を言って……はっ!」
 セルゲイエフの言葉に反応し掛けた香里は、警報に従い機体を急減速させる。彼女の機体がそのまま進めば占有したであろう空間に、120mmの砲弾が音もなく過ぎ去る。
「あなたも丸腰じゃない!? どうやって……くっ!」
 交わしきれないと判断したシュツルム・ファウストの弾頭をシールドで受け止める。すかさず反撃するが、あっさりと交わされる。
「作戦書通り、アルゴス02は撤退しなさい。これは命令よ!」
 追撃してくるドライセンに牽制射撃を加えながら香里は言う。
『ですが、小官でも楯になる事ぐらいは出来ます』
 既にコースを変えて、追撃してくるドライセンを迎撃する位置にEWACネロを遷移させているセルゲイエフが不満げな口調で言う。
「電子戦機は逃げ帰ってこそ、その価値があるの。楯になるのはあたし達の役目よ!」
『しかし!』
 セルゲイエフが反論しかけた時、彼の相棒が嬉しそうな声で会話に割って入る。
『赤外線反応ふたつ、アップ・ドップラー! 増援ですぅ!』
 ケリーの報告と同時に、全周モニタに通信ウィンドウが開く。
『正義の味方、ナイト01ただいま参上! 自棄になるなよ、トライデント01』
「遅いわ、あんまり女を待たせるものじゃないわよ」
『済まん。代わりに1機は任せろ』
「当然よ」
 香里は、合コンで相手の男性陣が「ここは僕たちのおごりで」といった時並に、さも当然といった風情で答える。背後にはドライセン2機が迫っている。
 一方、ランチの方はベース・ジャバーから降りたジェガンが既に向かっていた。
『レイピア01よりアルゴス02、そのまま撤退せよ』
『アルゴス02了解』
 ついさっきまで香里に抗命していたセルゲイエフがあっさりと答える。
『レイピア01より02、ランチを守れ』
『02了解!』
 通信を終えた舞は、そのままベース・ジャバーと共にこの戦闘宙域を飛び去る。
『後は任せたぞ、香里』
 やはり祐一もWR形態のまま飛び去る。その間に、大腿部ビームカノンで香里を追尾していたドライセンを1機、撃墜している。
「ふん、そっちこそ全員無事で帰ってきなさいね」
 香里は機体を反転させ、追尾しているドライセンと正対する。曳光弾を軽く交わしてビームライフルを構える。
「トライデント01より全機へ。ドライセンを押し返すわよ!」





天野美汐少尉による今日の俺設定(笑)


さて、今日も行ってみましょうか?


シールドの半自動防御システム:照準用レーザが当たれば、その方向からビームなり実体弾が飛来するのは当然の事です。思い付きの割に説得力のある設定ではないかと、作者は自慢気です。


MMP−80と弾種:俺設定ではありませんが、MMP−80とは0083でザクが持っていたストレートマガジンタイプのマシンガンです。ちなみにドラムマガジンタイプは120mmMMP−78マシンガンです。HEAMSはHEAT(対戦車榴弾)をもじったものです。読み方はやはり「ヒームス」でしょうか? APFSDSは現代兵器の基礎知識なのでググればすぐに分かります。ですから、ご自分で調べてみて下さい。ちなみに、宇宙空間で必要のない安定翼が付いている理由は、大気圏内でもそのまま使えるようにする為です。


吸水性ポリマー:要するに紙おむつです。ノーマルスーツ着用時は全員が使っています。つまり、全員がおむつ男でおむつ女なのです……って、このネタはどれだけ通用するのでしょうか?


ビンゴ・フューエル:帰投に必要な最低限の推進剤の意味です。元は航空機用語です。航空機と違い、推進剤が切れてもMSは墜ちませんが、母艦との邂逅時に推進剤が切れたら永遠に宇宙を彷徨う事になります。


スレイブモード:ベース・ジャバーは人間が操縦する事も出来ますが、MS側から制御する事で、無人で運用する事が出来ます。その無人運用モードをスレイブモードと呼びます。有人運用はマスターモードです。


ブラストオフ:発艦の事をテイクオフと呼ぶのに違和感があったので、ロケットの発進を意味する言葉にしました。ネタ元がOVA『ストラトス・フォー』だと思うのは早計です。ナムコの懐かしゲーム『ボスコニアン』がネタ元です。でも、それが分かる人って……。


MSの操縦:美坂中尉によるMSの操縦シーンがありますが、そこは眉に唾をたっぷり付けて読んで下さい。基本イメージとしては、IMPC(統合機動推進制御)をオンにしている場合は左のレバーで機体の制御(グリップにはセンサや無線関連のスイッチが付いている)を、右のレバーで武装の制御(グリップには武装選択やトリガといった武装関連のスイッチが付いている)を行います。右ペダルが加速、左ペダルが減速です。


タンカー装備のベース・ジャバー:推進剤のタンクを載せて、MSが母艦に着艦しなくても推進剤の補給が出来るように改造したものです。現代の空中給油機です。より直接的イメージは、A−6イントルーダーの改造機である空中給油機KA−6です。


以上が今回の「俺設定」です。お相手は、ラー・カノン操舵手、天野美汐少尉でした。
では、第2話後編でお会いしましょう。


続く

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